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  • 執筆者の写真Matsuda Makiko

バイリンガルのあり方探る=南米日本語教育シンポジウム=(下)=日系社会の将来を問う研究

2017年9月7日 ニッケイ新聞より

http://www.nikkeyshimbun.jp/2017/170907-72colonia.html


シンポ二日目の8月26日、細川英雄早稲田大学名誉教授の基調講演の後、南米科研発表「南米日系社会における複言語話者の日本語使用特性の研究(事業概要と中間発表)」が行われた。「科研」とは文部科学省の科学研究費助成金のこと。  概要を説明した研究代表の松田真希子金沢大学准教授は、「南米日本語人の言語・文化・教育資源はすばらしい」「その資源の適正な評価と有効活用には外部の目が必要」「いくつか解決すべき深刻な問題もある(多文化・多言語環境に育つ年少者の教育)」「日系二世がまだ元気なうちに記録を残す必要性」「研究者の南米への心理的・地理的な距離感を埋める必要ある」との問題意識をからこのプロジェクトを始めたと語った。  研究目的は「日本語(を含む)複言語・複文化能力はどのような環境でどのように現れるか」「日本語複言語・複文化能力の獲得・維持・喪失のメカニズムとはどのようなものか」「日本語複言語・複文化社会の成熟のためには、今後どのような教育・政策が求められるか」というもの。まさに『日系社会の将来の有り方』を問う頼もしい研究と言えそうだ。  続いて、上智大学短期大学部の宮崎幸江教授が発表。「CLD児童(多文化・多言語環境に育つ年少者)の言語習得とアセスメント(評価)」に関する神奈川県秦野市での研究事例が発表された。同大学は「はだのこども館」にあつまるブラジル、ペルー、韓国、ラオスなどの子供に日本語教室を実施し、2014年からはスペイン語教室、翌15年からはポ語教室も開設された。  そこでDLAという方法で、子供たちの日本語力を対話から評価し、家庭内の言語生活と学力形成の関係を探っていく研究だ。この評価手法を南米日系社会の日本語学校でも適用する興味深い試みが今プロジェクトで行われている。  大阪大学大学院の博士後期課程の伊澤明香さんからDLAを実際に使った「ブラジルに日系人の子どもたちの日本語保持の実態」(アセスメント調査の中間報告)が行われた。聖州で4校、パラー州3校の計7校の日本語学校に通う65人の子どもに今年4、5月に調査したもの。  「授業数が多いところは比較的に日本語保持能力が高い」「帰伯子弟の日本語能力保持に日本語学校が活用されている」などの傾向があることが中間報告された。2019年3月に再び調査をし、その後の日本語能力の変化も調べるという。  午後からはサンパウロ人文研の細川多美子理事から「多文化社会ブラジルにおける日系人コミュニティの実態調査(中間発表)」が行われた。  翌27日には「南米日本語教育のビジョンと今後の課題」が討議され、昼過ぎに終了した。(終わり、深沢正雪記者)

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